【ボドゲレビュー】シ祖狩リ(カクザトウ) – 純粋な論理力が試される、重くて軽いオシャレ正体隠匿

ゲムマ2024秋新作、カクザトウ様より「シ祖狩リ」のご紹介です。SNSでは予約も早々に打ち切られたほどの話題作でした。

まず見た目がいい!! 100点!!

……実は、このゲームを開封して一発目はあまり長く時間を取れなかったこともあり、何が起きているのか理解できないまま終わってしまったためにレビューを書けていませんでした。2回目にいざゆっくり時間を取って遊んでみて、やっと本質が理解できたのでこうしてレビューを書いています。

ハマるとスピーディーに遊べて楽しい、ちょっとばかり(……がっつり?)頭を使うゲームです。

どんなゲーム?

論理力が試される、招待隠匿系ババ抜きゲーム。

  • プレイ人数:4~5人
  • 対象年齢:10歳以上
  • プレイ時間:15分
  • 原作:カクザトウ、フダコマゲームズ
  • 発表年:2024
ヘビー ライト 実力 チル パーティー 難しい かんたん 苦味 酸味 デザイン性

重さ:重ゲーに分類されるものではありませんが、所要時間の割にはしっかりとしたプレーが求められます。

運要素:慣れてしまえば運ゲーにならざるを得ない局面もある、だけどバランス的にはそれくらいあっていい。つまり結構イイ感じです。

ルールの複雑さ:何が起きているのかを把握するまでに1試合要するタイプのゲームでしょう。2試合目からが本番かな。

その他:カードはブリッジサイズ(57×89mm)36枚。裏面が白のカードと黒のカードを使い分けますが、初版品は若干発色に差があるカードがあったため、気になるならアートスリーブを使った方がいいかもしれません。

おすすめポイント

外装へのこだわり、120点

ただでさえ原価率の高くなりがちな同人業界では狂気とされているメタリックプリントです。すっげえよ。

洗練されたデザインセンスが光る箱はゲームのコンセプトにもマッチしておりとても好印象です。素材の強みを生かしています。

※ちなみに初版は原価割れしているという作家様の狂気が詰まった作品で、重版はあっても初版と完全に同じ装丁で出ることはない予定、とのことです。

理解したころにジワジワやってくる。多角的な面白さ

ルールを丁寧に説明するとかなり長くなってしまうので、ざっくりとした説明だけ。

役職は始祖が1人、他は全員狩人です。

ゲームの基本的なメカニズムはババ抜きのような感じ(ただし誰からでも引けるし何なら渡すこともできる)で、誰かの手札が0枚になったら始祖の勝ち。そうなる前に狩人の誰かが始祖を言い当てられたら狩人側の勝ちです。

手番ではアイテムカードの種類をひとつ宣言して、他の人からカードを引くか、自分のカードを引いてもらいます。手札にアイテムのペアが揃えばそれを裏返しで場に出せます。ただし、宣言したアイテムのペアができた時だけは表向きにペアを出して、情報を増やすことができます。

ただし、カードをやり取りする過程で、始祖が持っている2枚の「吸血カード」を引いてしまった狩人は、その時点で秘密裏に眷属となり陣営が変わります。また吸血カードを引いてしまった場合、他のアイテムカードとペアにして、(いかにもアイテムが揃ったような顔をして)裏向きにして場に出します。

狩人は手番の代わりに、始祖が誰かを宣言することができます。誰かがこの行動をとった時点で答え合わせになり、役職カードを含む全てのカードを表向きにしてゲームは終了します。

始祖を言い当てられていれば勝ちですが、寝返っていない狩人の数とペアになって場に出ているアイテムの数が既定の数より足りなければ、始祖を言い当てられても討伐できずに逆転負けになってしまいます。

万が一即座に始祖がバレたとしてもダミーのペアや寝返りの発生によって逆転の目があり、すぐにはゲームが終われないようになっています。裏向きでペアになっているカードは全てがアイテムのペアとは限らないので、当てたと思っても数が足りず負け、なんてことも。

……勢いよく説明しましたが、どうでしょうか? なんだか難しそう? 実際、そう簡単なゲームではありません。数を回して理解が深まってくると俄然面白くなってくるタイプです。

ゲームを実際にやってみないと想像するのは難しいですが、結構気軽に裏切りが発生します。状況によっては「もう狩人側勝ち目ないから血吸われとくか~」と気軽に寝返り狙いで始祖からカードを引きに行くという血も涙もない戦略がまかり通ります(実際に吸われているため血は無い)

最初はちゃんと始祖を当てに行こうとか身構えたくなるゲームですが、実際各プレイヤーの動きに応じて色々な戦略が考えられるのが面白いです。

"人狼が苦手な人にこそ遊んでほしい正体隠匿"?

これはBOOTH通販にある記載のそのまんまです。

こういうキャッチ、よくありますよね。よくあるし、ぶっちゃけ疑わしいと思ってる人が多いんじゃないでしょうか。「●●が嫌いな人でもこれは食べられる!」「食えんやないかい(怒)」みたいなね。

本作はどうでしょうか。

このゲーム、いくつか注意点があります。まず、会話ができないため、全ての推理を各個人が自分の中で行う必要があります(人狼でも同じですが)。その結果、論理力が足りていないと「なんでこの状況から始祖を絞り込めるの?」となる人が出てくることがあります。私がプレイした時も実際にそういう場面がありました。

また、会話が禁止されているとはいえ、ゲーム終了後には自然と感想戦が始まります。「あの時はこっちの方が良かったんじゃない?」「こっちを指定するべきだったかも」など、プレイ内容について議論したくなるのはどうしても仕方のないこと。もちろん好きな人にとってはそれも醍醐味の一つと感じられることでしょう。

とはいえ、このゲームの設計は非常に工夫されています。

そもそも人狼が苦手な人は何を苦手にしているのか、渋谷の女子高生100人に聞いてみますと……

  1. そもそも嘘をつくのが嫌い。
  2. 吊られたら暇になるので。
  3. 会話で詰められるのが嫌い。
  4. 何してるかわからんうちに終わるので。

大方こんなところでしょう。

誰かが推理(誰が始祖かを言い当てる)をした時点でゲームが終了するため、「吊られたら暇になる」という状況がありません。また、ゲーム中の議論がルール上禁止されているため、会話による詰めや嘘をつく必要がなく、人狼が苦手な人が感じる負担がかなり軽減されています。

総じて、「論理力はあるけどトーク力がないので正体隠匿系が苦手」という人には特におすすめできるデザインになっていると言えるでしょう。要所要所をうまく対策しつつ、推理の楽しさを存分に味わえる絶妙なデザインが光っています!

総評 - いろんな意味で"よく作ったな、これ"

ルールを読んだだけでは何が起きるのかなかなか掴みづらいのですが、実際に遊んでみると確かに面白い。1ゲーム10分程度のこのゲームだけで2~3時間回した、と言えば面白さが伝わるのではないでしょうか。

普段何食ってればこのシステムを思いつくのか、と思わずにはいられません。

通販はBOOTHにて。過去作もたくさんありますので、気になったら今すぐチェック!