【MTGアリーナ】欲しいレアを取りつつ勝負にも勝ちたい。クイックドラフト7勝デッキ集を見ながら考える

MTGアリーナには、他のプレイヤーのことを気にせず気軽にドラフトを楽しむためのモード、「クイックドラフト」が実装されています。

これはbotに他プレイヤー7人分のピックをしてもらうゲームモードです。

このドラフト、botの挙動が人間がやるピックとだいぶ異なっているために、それをハックした動きをすることで勝ちやすいデッキを組むことができるようになっています。一方で対人を意識したピックを進めてしまうと思ったようにカードが集まらないことも。

対人ドラフトより安く遊べるドラフトということで気になっている方も多いと思うので、この辺りの挙動を解き明かしてみましょう。

対人ドラフトと対botドラフトの違いは?

クイックドラフトにはBO3形式はないので、BO1で必要なカードを集めることを考えます。

レアの評価が異常に高い

ボムレアはさておき、リミテッドでは使い辛い構築向けと思われるようなレアや、色の合わない多色土地ですら、3手目に回ってくることは珍しいです。

だいたいbotの第1ピックはレアになります。これは別にbotがそのカードが強いと思ってピックしているのではなく、あまりレアを流しすぎてクイックドラフトでレアを大量に入手出来てしまうと問題だからなのだと思います。

ゴールド換算なら1回のドラフトでレアが4枚手に入ってしまうと、普通にパックを買うのと何も変わらなくなります(ドラフトでピックした4枚+最低保証1パックから出るレア1枚=5枚になる)。

1-1から色を決め打ちしてピックしても大丈夫

対人ドラフトで1-1から多色のカードを取るというのは他の色に手を伸ばし辛くなり卓の状況次第で苦しいピックを求められてしまうことが多く、あまりやりません。

しかしbotは他の人がどの色をやっているかについて考慮していないので、やりたいアーキタイプが出やすいコモンで成立するならば、多色のカードを初手ピックしてしまってもなんとかなります。後述しますが特にニューカペナの街角ではこれが顕著です。

何パック目でもカードの評価は(たぶん)一定

たとえば、1パック目で13手目にあるカードが流れてきたとして、そのカードが2枚3枚と欲しいカードだったとします(対人ではあまりないことだと思いますが、クイックドラフトではこういうことが起こります)。そういうカードが2パック目から開封できた時、他のカードを捨ててまで即ピックする必要はありません。なぜならそういうカードはbotからの評価が悪いので、一巡ぐらいは平気で流れてくるからです。

botはおそらくデッキを作るためにカードの役割分担みたいなことをあまり考えていないのだと思います。「クリーチャーが何枚、除去が何枚必要だから、3パック目では既に取れているクリーチャーよりは除去を選ぶ」といったことがなく、「カードの評価が既にピック出来たカードにかかわらず固定なので、2択なら常に同じカードを選び続ける」のです。

《垂直落下》のような緑の置物・飛行対策のインスタントがほとんど最後まで残っているシーンをよく見るのではないでしょうか? BO3で緑デッキを組んでいるならほとんど必ず、そうでなくてももしかしたら入るかもしれないので1枚は取っておきたくなるカードですが、botには「1枚だけは欲しい」という発想がないのでこういうことが起こります。

上手く使えば強力なコモンのカードでbotからの評価が低いカードというのがそこそこあります。そういったカードをかき集める戦略はクイックドラフトにおいてはかなり有力です。

だから、流れてきた構築向けレアは取ってよい

上であまりないことだと書きましたが、もしも欲しいレアが流れてきたら即ピックして構いません。残りのピックで十分実戦的なデッキができることは明らかです。それもまた上に書いたように、botが流しやすいカードを集められることがわかっているからです。

実践例

ここからは最近の環境で実際にクイックドラフトをプレイして作ったデッキを見ながら、どんなデッキが強く作れるのかを考えてみます。

ニューカペナの街角

個人的に、クイックドラフトで一番簡単な環境です。

ニューカペナの街角のリミテッドは白がずば抜けて強いというのは周知の事実ですが、対人ドラフトではないので強い色が特別混むことがありません。なのでテキトーに緑白青に寄せているだけでイージーウィンできます。レア枠に構築専用のものがほとんどなく、3色アンコモンに至っては初手ピック級に強いので、運よく開封できれば負ける方が難しいデッキができます。確かに白青黒にも強力なカードはありますが、再現性という観点では緑白青の方が上です。

1-1で他の色の神話レアが出てもなお白青に寄せた方が平均的に強いです。白を含まないザンダー、ジアトラなどは色を変える理由になりません。白を含むラフィーンとジェトミアは一考の価値ありですが、たとえばジェトミアなら緑白タッチ赤ぐらいで使う程度が良いと思います。

緑白青(7-2)

《鼓舞する監視者》が取れなくても色が強いので何とかなってしまうという例です。当たり前ですが《大衆蜂起》は割られなければ勝ちのボムなので何が何でも使います。レア枠以外は非常に再現性が高く、似たような構成で6-3や5-3を連発していました。

《警備の抜け道》はあらゆるクリーチャーをフィニッシャーに仕立て上げることができるため必ず確保しましょう。緑白にタッチして使う価値すらあり、デッキに2枚ぐらい入っていていいと思います。《捨て駒の従僕》のように軽すぎて積極的に除去したくないようなクリーチャーや、二段攻撃持ちの《規律正しい決闘者》が特に相性が良く、それだけでゲームが終わることも多いです。

緑白(7-0)

青を使わず市民シナジーに寄せたデッキです。レア以上を一枚も使っていません。

《市民の奉仕者》は強力ながらクイックでは流れてきやすいので簡単に集まります。《鼓舞する監視者》共々3枚もピックできており再現性は低いですが、低マナ域を並べて《街宣行進》で奇襲的にフィニッシュ、という簡単な戦略が見事にハマりました。このアーキタイプを狙うなら《市民の奉仕者》《儀礼用シャベル》《街宣行進》は確実に押さえておきたいです。

ピックのポイント

  • 必然的に3色デッキを組むことになるため、多色土地は積極的に取りましょう。だいたい7~9手目までにはコモンの多色土地は売り切れます。
  • 白青緑に寄せている限りとにかくカードパワーが高いので、デッキ内の土地以外の全てのパーツを「①対処を強いる(放置すると負ける)呪文」「②カードアドバンテージが取れる呪文」「③相手の脅威に対処できる呪文」にすることができる環境です。逆に言うとこの3つのどれにも当てはまらないような呪文はピックの価値がほとんどありませんので、そのようなプールからは3手目4手目でも多色土地を取って色の安定化を目指すのがベターです。
  • 盾カウンター持ちのボムを1枚で処理できるカードを一枚は拾うようにしましょう。7戦もやっているとどこかで一回は《聖域の番人》《産業のタイタン》クラスのボムと相対することになります。緑白青なら通常は《証人保護》か《口止め》になります。

神河:輝ける世界

シナジー環境なのでバランスの良いピックが求められ、「これ一枚でも維持できれば勝てる」タイプのカードが多くないのであまり簡単ではありません。

最強色は間違いなく青黒なので《語られざるものの警告》のような強いカードがピック出来るなら素直に青黒に寄せる方向で行けばよいですが、エンチャント軸の緑白でも優秀なデッキができます。赤はどっちつかずになってしまうのでやめておいた方が良いと思います。

青黒(7-2)

ハッキリ言って再現性ゼロですが、面白いデッキなので紹介します。《メカ巨神のコア》を採用した青黒デッキです。先手を取って畳みかける力が強く、割と簡単に勝ててしまいました。しかし長期戦をやるようにはできていないので、後手に回った時に同じように強いかと言われると微妙です。

機体は白青に割り当てられているので違和感があるかと思いますが、《大牙軍団の襲撃》の裏面、機体に威迫を与える効果が実戦的に生きるので、機体を絡めてデッキを組むのは実は結構アリです。《ウイルスの甲虫》などの忍術のタネがメカ巨神のタネになるのもおいしい。

ピックのポイント

  • 環境にかかわらず黒のクリーチャー除去の売り切れは早いので、青黒軸を組むなら《ねじれた抱擁》のような強力な除去は早めに確保しましょう。
  • 追放除去の《古代への衰退》はアーティファクトでもエンチャントでもないクリーチャーを対処できないせいかbotの評価が低く、意外と回ってきます。迷ったら英雄譚を優先して良いです。

団結のドミナリア

この環境は長らく苦戦していたのですが、先日ついに7勝達成デッキができました。

全ての色に版図持ちや多色キッカーが複数枚あり、3色の指針アーキタイプこそないものの基本的には3色以上の多色化推奨です。そのため基本的には緑を含む多色で組むのが安定します。

キッカーやドメインなどでもっさりしたアクションが多くなるので、後攻からまくるアクションを用意できているかがカギとなりそうな感触を受けました。常に先攻でぶん回った時のことばかり考えていてもなかなか安定した勝率をあげるのは難しいです。

黒赤緑(7-1)

4マナ域に(2)(R)(R)、(2)(R)(G)、(1)(R)(G)(G)、(1)(B)(R)(G)とよくこれで回ったなと思えるようなきつい色拘束が並んでいますが、《発掘されたマナ労働機》と《水晶の岩屋》、多色土地2枚のサポートで無事に回っています。色拘束の目安として見て頂くと良いかもしれません。

1-1《ウィンドグレイスの魂》から思い切って黒赤緑一直線に伸ばしたデッキですが、実際には《ウィンドグレイスの魂》は最速着地即除去退場を繰り返していたので、これのおかげで勝てたゲームはありませんでした。《邪悪を打ち砕く》など簡単に取れる軽い除去に引っかかってしまうのが痛手だったようです。

むしろこのデッキのキーカードは2枚採った《パルデュヴィアの狂戦士》でしょう。実際には3枚ピックできており、強さ以上に流れてきやすいかもしれません。

ピックのポイント

  • クリーチャーはbotがメインでやっていない色であればかなり簡単にピック出来ます。たとえば赤をやっていなかったbotが《メリアの先導》のような強コモンを12巡目まで流してきたり、緑白が手薄いbotから《ルアダッハの女王、オーリナル》が13巡目に流れてきたりしたのを目撃しています。1パック目で残っていた色に対しては積極的になってもよさそうです。
  • 緑多色にする一つの理由として《潮に仕えるもの、タトヨヴァ》の存在があります。多色デッキは必然的に長期戦になりやすく、除去されなければこれ一枚でゲームを決定づけられるボムアンコモンでありながら、上述したように多色クリーチャーはbotがやっている色と合わないために流されがちです。おそらくbotには色タッチの概念が欠けているのだと思いますが、我々はタッチ青で採用できるよう常に見張っておきましょう。
  • 逆にコモンの多色土地は片方でも色があっているbotはピックしようとするので、2周しないものと思った方が良いです。色が合うなら雑なコモンクリーチャーより優先してピックしましょう。特に1パック目では2パック目以降に他の色の強レアが出た際に渡りを付けやすくなるので、かなり積極的に取ってよいでしょう。
  • 色事故を軽減するためのマナフィルター、特に《発掘されたマナ労働機》がピックできるととても安定します。赤を含まないデッキでの《強引な妨害》などで、色の合わないキッカーを無理やり使うことができるようにもなります。

兄弟戦争

パワーストーンでランプしてデカブツを叩きつけるのが基本みたいなエキスパンションです。

アクションが大振りになりやすいので適切に1対1交換が取れる除去を強く使える色が強いです。アーティファクトを破壊するなら赤緑白あたりの色ですが、攻撃を通す手段にも乏しいので強い飛行持ちがいたら積極的にピックしましょう。《アルゴスのスプライト》は2/2/2で序盤の最低限の壁になりつつ、最後は起動型能力でフィニッシャーにもなれるため何枚でも欲しいです。

白青の兵士アグロも強いですね。兵士のロードの《ヨーティアの戦術家》は意外と回ってくるので、3枚4枚と取れてしまうこともあります。

赤緑(7-1)

土地は8-8になってますが赤の方が若干濃いので多分9-7とかが適正です。

接死で止めつつ飛行で空から殴る、かなり無駄のない構成です。脅威に対する対処手段が多く取れており、バンプアップでマナフラッドにも対応しやすいのがポイントです。ただボムレアの《カー峠の暴君》が強すぎるため、再現性はそれほど高くないかもしれません。

緑白タッチ青(7-2)

《大砂漠探鉱者》《ガイアの狩猟者》の5マナ域のカードパワーが頭一つ抜けている印象です。低マナ域から種類を問わずクリーチャーを並べることが後半の強いアクションへの繋ぎになるので、安定します。除去とコンバットトリックもバランスがよく、上手くまとまりました。

《作業場の師、トカシア》は単純に戦場に置いておいて警戒付与とタップ諜報能力が強いのでタッチの価値があります。

【おまけ】茶単……?

対戦相手が面白いデッキを組んでいて感心したので、ちょっとご紹介します。茶単、もとい作業員単です。

自分のデッキは上で紹介した緑白t青の7-2デッキです。

この後しばらく対戦相手の動きを見ていましたが、本当に作業員しか出てきませんでした。土地も3枚で止まっていたのでもしかするとかなり枚数を絞っているかもしれません。デッキ全体がコンボパーツでできているので3点回復と対処強要するバンプアップが簡単に揃い、意外と鬱陶しいです。

相手の脅威を対処する手段を1枚も持っていなかったのでさすがに苦しく、それこそ《アルゴスのスプライト》が全く止まらないのでこの試合はこちらが勝ちましたが、ここに少し除去なんかを足してやることで十分戦えるデッキになるような気もします。

クイックドラフトではこういうピックも成立するんだということがよくわかる例です。

ピックのポイント

  • 組立作業員セットは《鉱山の作業員》がほとんど最後まで残っているということさえ知っていれば、結構簡単に揃います。フィニッシャー枠に困ったときはとりあえず《魔力炉の作業員》を拾っておくのはアリです。
  • 《ペンレゴンの雄牛》《拮抗する兄弟》は割と拾いやすいコモンの2枚コンボなので、赤をやるなら拾っておくといいと思います。《拮抗する兄弟》のようなコントロール奪取カードは大ぶりなカードが多いプールでは瞬間的な打点が高く、強力に使えます。
  • 1マナ域は《コーリスの生存者》など露骨に強いものもありますが、色を問わず残りがちです。デッキ内のパーツとして必要そうでも2巡目にピックするために流してしまった方が良いでしょう。

【おまけ】アルケミーホライゾン:バルダーズ・ゲート

アルケミーホライゾンは今後クイックドラフトで再登場するかはわかりませんが勝っているデッキのサンプルとして見てみます。

白青(7-2)

確かに7-2してるんですが、正直どうやってフィニッシュするつもりなんだろう、みたいなデッキです。高マナ域の飛行クリーチャーとごく少量のアンブロッカブルに頼っています。実はここまで紹介したほとんどのデッキはアンブロッカブルかそれに似た能力持ちのクリーチャーが入っており、良い働きをしていました。リミテッドではクリーチャーで対処困難なクリーチャーは強いということですね。

ブリンクが動き出すとドローとライフゲインが止まらなくなるデッキなので、色に割り当てられたアーキタイプとシナジーを上手く生かすことができていると思います。

おわりに

いかがでしたでしょうか。サンプルデッキ集から何か役に立ちそうな考察が得られれば幸いです。

クイックドラフトは対人ドラフトとは少し違ったピックをすることで、効率よくジェムを稼ぐことができる穴場です。botの習性を利用して、欲しいレアカードを集めつつ、対戦にも勝てるデッキの組み方を模索してみてください。