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Got Talent シリーズの見どころの一つとして、時折、健常者にもできないようなとんでもない技術や能力を持った障害者が出場することがあります。健常者でさえ才能を世の中に知らしめることは難しいもの、まして日常生活にも支障があるような障害を持っていればなおさらです。そんな中、この番組はそういう機会を提供してくれているわけで、これはとても素晴らしいことだと思っています。
今回紹介するのは、AGT の歴史の中で、大きなハンデキャップを背負いながらも総合優勝を飾ったピアニストです。つい先日のAmerica’s Got Talent: All-Stars にも登場し、下馬評通り予選を圧巻のパフォーマンスで通過しています。残念ながら本稿執筆時点でAGT: All-Stars は結果が出ており2度目の優勝は叶いませんでしたが、それでも彼の才能は世界中が知るに値する素晴らしいものだと思います。
Kodi Lee (コーディ・リー)のご紹介です。
どんな人?
彼の才能と人となりについて知っていただくためには、彼の初出のオーディションを見ていただくのが最もわかりやすいでしょう。
冒頭で彼のお母さんが付き添いで説明している通り、彼はやや、いやかなり特殊な生い立ちを持っています。彼は先天的に、あるいは幼少期のかなり早い段階から、多数の難病に直面してきた人物です。ざっと名前がついているものが以下の通りです。
- 視神経低形成症 (ONH)
- 全盲
- 自閉スペクトラム症 (ASD)
- アジソン病 (Addison’s Disease)
- サヴァン症候群 (Savant Syndrome)
視神経低形成症は眼と脳を繋ぐ視神経の形成に先天的な異常が出る疾患で、彼はこれが原因で失明しています。オーディション時にも彼は目が見えていないため、母親の付き添いの元ピアノの前まで案内してもらっています。盲目のミュージシャンというと、スティーヴィー・ワンダーを思い起こした人もいるのではないでしょうか。彼はまさにその系譜を継いでいると思います。
自閉スペクトラム症については近年は認知度が大きく高まってきている症状ですので、ここでは特別には取り上げません。詳しくはこちら等をご参照ください。アジソン病は指定難病の一つに数えられる、重篤な副腎不全です。こちらについても詳しくは専門のページをご覧ください。
そしてこれらの困難と闘った彼が代わりに授かったもの、それが音楽の才能でした。
サヴァン症候群、という障害をご存知でしょうか? 先天的に精神的あるいは知能的な障害を抱えていながら、ある特定の分野に関して健常者でも示さないような突出した才能を顕す人、またはその症状にこのような名前がついています。
歴史上の著名人にもサヴァン症候群であったのではないか、と推測されている人物が時折見られます。また余談ですが、以下の小説作品は作中でサヴァン症候群について扱っています。
これはしばしば「ギフテッド」と混同されますが、サヴァン症候群が特定の分野のみへの高い適性を示すのに対し、ギフテッドは満遍なく高い能力を示す人や症状を表しており、本質的に別物です。
彼の母親いわく、彼は「とても早い段階から」音楽への適性を見せ始めたと言います。彼のピアニスト、シンガーソングライターとしての能力は、彼自身の持つ才能だけでなく、また周囲の献身的なサポートがあってこそ開花した才能と評価されています。
オーディション出演歴
AGT Season 14 (2019) オーディション | ゴールデンブザー (Gabrielle Union) |
AGT Season 14 (2019) 準々決勝 | 通過 |
AGT Season 14 (2019) 準決勝 | 通過 |
AGT Season 14 (2019) 決勝 | 優勝 |
AGT: All-Stars (2023) 予選 | 1位通過 |
AGT: All-Stars (2023) 決勝 | 敗退 |
AGT Season 14 の審査員のうち2名(Gabrielle Union と Julianne Hough)はこのシーズン限りの参加だったため、結果的にこのゴールデンブザーが Gabrielle Union の押した唯一のゴールデンブザーとなりました。
最後に
見るものの心を震わせる迫真の弾き語りは、バックグラウンドがどうあれ誰にでもできるものではありません。何かを通して人に訴えかけ、涙させるだけの力というのは紛れもない才能です。
自分の強みを全力でサポートしてくれる家族の存在にも恵まれて開花した、唯一無二のパフォーマンスでした。