【世界の才能に会いに行く】Kseniya Simonova 芸術は万国共通語。世界に感動を届けた砂の女傑

「英語が使えれば、世界15億人と分かり合える。絵が描ければ、世界70億人と分かり合える。」

誰が言ったか知りませんが、こんな言葉があったような気がします。いい言葉です。

世界中どこにいても通用する才能というのは稀有なものです。今回ご紹介するのは、絵と物語で世界中に感動を届ける、一人の気高き芸術家です。そう、英語がわからなくても、彼女のパフォーマンスは全編全世界共通です。感涙必至のパフォーマンス、一度はご覧ください。

Champions シリーズにおける、唯一無二の快挙

初登場は2009年、Ukraine’s Got Talent (ウクライナ版のGot Talent) のシーズン1。

歌手、マジシャン、ダンサー、多種多様なパフォーマーが集まる中、彼女のジャンルは後にも先にも例のない独特のものでした。

サンドアーティスト。砂を使って即興で絵を描く、アートの一種です。素手から描かれ、一瞬の後には消え去ってしまう、そんな儚いイラストが見る人を魅了します。

中でも有名なのが、準決勝で見せたこちらのパフォーマンス。約8分とGot Talentの1パフォーマンスにしては非常に長いですが、ちょっとした短編ドラマを見る気持ちでどうぞ。

第二次世界大戦をテーマにした、重い物語です。当初番組プロデューサーにはもっとわかりやすくポピュラーなテーマを扱うようお勧めされたそうですが、彼女は自分の意思を曲げなかったと言います。

I just want to bring some immortal sense to this show.

Not just pictures or video clips.

Something close to all hearts.

私は何か永久に心に残るものをお見せしたかったのです。
それはただの絵画やビデオのようなものではないと思います。
私たちにとって、もっと大切なものです。
(原文はウクライナ語)

彼女はこの年のUkraine’s Got Talent で見事優勝を飾り、賞金€100,000を獲得しました。

それから10年という長い時を経て、AGT: The Champions に出場します。これはその名の通り歴代上位者のみの招待で開催された、世界最高峰の舞台。彼女は Ukraine’s Got Talent の優勝者としてこの大舞台に臨みます。

音楽に乗せて、砂のキャンバスを泳ぐような、滑らかな手つきで感動の物語を紡ぎます。この時披露した演目 “Don’t be too late!” は、10年前の決勝で披露したもの。家族と過ごす時間の儚さと貴さを描く物語です。

結果はご覧の通り。審査員の審判を待たずして、この年度から新たに司会の座を務める Terry Crews による、初のゴールデンブザーを射止めたのです。

この後決勝のパフォーマンスを経て、最終結果は……惜しくも3位。3位とはいえ世界中からおよそ50組にも及ぶ屈指のタレントを集めての大会でこの結果ですから、間違いなく誇れるものだと言っていいでしょう。

さらにそれほど間を開けずに、今度はBGT: The Champions(イギリス版)にも出場。こちらではまた新しい物語を披露しています。

なんと、こちらの予選でもゴールデンブザーを受賞。Championsシリーズで2度ゴールデンブザーを受賞したのは、後にも先にも彼女ただ一人です。

決勝はイギリスということもあり、故ダイアナ妃に捧げる作品のパフォーマンス。毎回新作を用意してそれを完璧に披露する才能にはただただ敬服するばかりです。

そして気になる総合順位は……なんと、こちらも3位。

Championsシリーズで2度の決勝進出自体が歴代2人しかおらず、さらにその2度ともトップ5以内に入ったのは彼女だけです。AGT と BGT では風土の違いというか国民性の違いというか、上位に入りやすいジャンルに若干の差があるのですが、彼女のパフォーマンスはあまりにもユニークで、全世界どこででも通じる魅力を感じさせてくれます。

その後、Champions シリーズの Season 2 ではゲストパフォーマンスとして、同年決勝に進出したジャズ歌手のAngelina Jordan, バイオリニストのTyler Butler-Figueroaと共に見事なコラボパフォーマンスを見せてくれました。

私の好きな人々が一堂に会しているという贔屓目もありますが、これは本当に傑作です。

どんな人?

1985年、ウクライナのクリミア(誕生当時はソ連)出身。10代後半~20代前半にかけて、ウクライナ国内で芸術、心理学、グラフィックデザインなどを専攻しています。2007年には結婚し、現在は2児の母親です。

キャリアの中でサンドアートを始めたのは実はかなり後になってからで、サンドアートも Ukraine’s Got Talent への出場も、夫の勧めだったそうです。

キャリアを生かし、グラフィックデザイナーや詩人としての活動も行っています。Got Talent 優勝後は世界各地でパフォーマンスを披露しており、ユーロビジョンやオリンピック閉会式などでのパフォーマンス経験もあります。中にはDiorフェラーリフォルクスワーゲンなど一流企業とのコラボ案件も。

オーディション出演歴

Ukraine’s Got Talent Season 1 (2009)優勝
AGT: The Champions 予選 (2019)ゴールデンブザー (Terry Crews)
AGT: The Champions 決勝 (2019)3位
BGT: The Champions 予選 (2019)ゴールデンブザー (Amanda Holden)
BGT: The Champions 決勝 (2019)3位

ウクライナ版 Got Talent の栄えある初代優勝者であるだけでなく、ここまでの成績を残した人物は過去に例がありませんし、これからもそう簡単に出てくることはないでしょう。掛け値なしの宝、という言葉で言い表せるでしょうか。

※ルーマニア版に出演したという情報がありますが、詳細不明のためここでは割愛します。

その他受賞歴

  • Merited Artist of Ukraine

ウクライナで芸術分野において多大な功績を残した人物に授与される賞です。日本で言うところの紫綬褒章に相当します。

現在は?

ウクライナ出身の方を紹介しつつ現状に触れないというのも不自然だと思うので、現況についても少し調べました。

Instagram や twitter で近況を窺い知ることができます。現在活動の拠点をどこに置いているのかはわかりませんが、2022年8月現在も世界中を飛び回って変わらず活動を続けられているようです。

各種SNS情報

公式HP:http://simonova.tv/

公式HPから過去の作品の数々を見ることができるほか、ライブパフォーマンスの動画をYouTubeで公開しています。