【MTG】土地2枚でキープ、そんなに悪いことなのか?土地に関する確率計算してみた リミテッド編

突然ですが、皆さんはこの手札、キープしますか?マリガンしますか?

MTGに限らず多くのTCGをやっている限り、マリガン問題というのは常に付きまとう難易度の高い問題です。私もなんとなく雰囲気で判断しています。

私が(特に環境最初期のリミテッドで)よくやるのが、メタゲームとかよくわからないので軽いクロックを押しつける速攻型アグロを組むという雑なデッキ構築なのですが、それをやると上の画像のような局面にしばしば直面するのです。

  • つまり、軽いデッキなら土地2枚でキープしていいのか?
  • そもそも40枚デッキなら土地17枚が適正と言われているが、本当か?
  • 同じく60枚デッキなら24枚だか25枚だかそれ以上なのか以下なのか……

そろそろなんとなくの判断をやめて、この辺りの確率についてしっかり把握しよう、というのが今回の記事の主旨になります。

デッキ枚数や土地の枚数、ダブルシンボルやタップイン多色土地など色々な要素が絡み合うため全てを一気に検討するのは難しいので、記事を数回に分け、段階を踏んで見ていきたいと思います。今回は最も複雑度の低い、リミテッド(40枚)単色デッキの場合を見ていきます。

(2023.6追記)構築編はこちら↓

リミテッド(40枚)単色デッキの場合

計算方法については後日別記事を公開します。理詰めで計算することも可能ですが、面倒なのでモデルを作って100万回試行しました。いわゆるモンテカルロ法によるシミュレーションです。

土地17枚/40枚デッキ、先攻の場合

こちらが計算結果です。

初期手札の土地の枚数01234567
観測回数(n=1,000,000)131669235624477532271622686983847152091062
確率(%)1.3%9.2%24.4%32.3%22.7%8.4%1.5%0.1%

土地2枚しかないパターンは実は土地4枚のパターンよりも出現頻度が高く、ほぼ4回に1回は遭遇することになります。土地が3~4枚で問題なくキープできる手札はたかだか55%しか来ず、特殊なデッキでない限り即マリガンするような手札が結構あるということもわかります(これは土地の枚数のみを考慮した結論です)。

初期手札の土地の枚数3ターン目に
3枚目の土地が
置ける確率
4ターン目に
4枚目の土地が
置ける確率
5ターン目に
5枚目の土地が
置ける確率
2 (n=244775)71.0% (173737)42.9% (105028)23.3% (56957)
3 (n=322716)100%82.2% (265240)57.4% (185280)
4 (n=226869)100%100%88.1% (199853)
先攻の場合

下8行の出力から重要そうな部分だけを抜粋、計算したのが上の表です。

先攻で土地2枚の手札をマリガンせずに始めた場合、実に29%のケースで土地が2枚で止まります。さらに28%のケースでは土地が3枚で止まり、土地4枚までスムーズに伸ばせるケースの方が珍しくなります。

土地17枚/40枚デッキ、後攻の場合

さて、今度は後攻ならどうなんだ、という話になります。1枚余計に引けるのでその分事故を起こしづらいだろうという考えですね。

初期手札の土地の枚数3ターン目に
3枚目の土地が
置ける確率
4ターン目に
4枚目の土地が
置ける確率
5ターン目に
5枚目の土地が
置ける確率
2 (n=244995)85.0% (208167)62.5% (153242)41.0% (100447)
3 (n=323697)100%90.5% (293014)72.2% (233777)
4 (n=226123)100%100%93.5% (211398)
後攻の場合

今度は2枚でキープしても85%のケースでは3枚目の土地を置くことができます(これを多いと見るか少ないと見るかはまた別のお話ですが)。

逆に安定した枚数でキープした場合、土地3枚でキープして4枚目の土地が置けない(9.5%)、あるいは4枚でキープして5枚目の土地が置けない(6.5%)というのは結構な不運であるということが言えます。

土地を削るとどうなる?

さて、多くの戦術指南では土地の枚数は17枚が良いとされており、減らすのは基本的に悪手であるとみなされています。

しかし、デッキが全体として軽い構造だったり、どうしても入れたいカードがある場合、土地を16枚にしたり、デッキを41枚にしたりすることを考えることがあると思います。

どの程度の差が出るのか、計算してみましょう。

土地16枚/40枚デッキの場合

初期手札の土地の枚数01234567
観測回数(n=1,000,000)186891147132738883194621973386506210232616
確率(%)1.8%11.5%27.4%31.9%19.7%6.5%1.0%0.1%
17/40との差分+0.5%+2.3%+3.0%-0.4%-3.0%-1.9%-0.5%-0.0%

土地の枚数が要らないとはいえ、安定してキープできる手札が露骨に減るのは問題です。

初期手札の土地の枚数3ターン目に
3枚目の土地が
置ける確率
4ターン目に
4枚目の土地が
置ける確率
2 (n=273888)67.6% (185153)38.3% (104947)
3 (n=319462)100%79.0% (252352)
16/40、先攻の場合

軽いデッキだからという理由で土地の枚数を減らしているので土地の枚数が少ない状態でのキープが肯定されそうなものですが、実際に土地2枚の手札をキープした場合、ほぼ3回に1回は土地が2枚で止まってしまいます。これは厳しい数字です。

土地の代わりにどうしても入れたいたった1枚のカードがその分を埋め合わせるほど勝ちに繋がるカードでない限りは土地は17枚入れるべきだし、実際そんな強力なカードはほとんど存在しないということも直感的にわかるかと思います。

土地17枚/41枚デッキの場合

初期手札の土地の枚数01234567
観測回数(n=1,000,000)153371015662567313222812136487629413225918
確率(%)1.5%10.2%25.7%32.2%21.4%7.6%1.3%0.1%
17/40との差分+0.2%+1.0%+1.3%-0.1%-1.3%-0.8%-0.2%-0.0%

やはり土地2枚のパターンが増加しますが、16/40の時よりは変化は小さいです。

初期手札の土地の枚数3ターン目に
3枚目の土地が
置ける確率
4ターン目に
4枚目の土地が
置ける確率
2 (n=256731)69.4% (178299)41.0% (105150)
3 (n=322281)100%80.9% (260822)
17/41、先攻の場合

ただ現実的に土地を除く24枚から不要そうなものを1枚だけ抜いてくれと言われて、全く選べないということはなかなかありません。この程度の確率の変化であれば許容できなくもなさそうに見えますが、最終手段ですね。

MTGアリーナBO1ルールにおける土地補正について

MTGアリーナのBO1ルールでは、マリガン事故の影響を減らすために初期手札について以下のような補正が掛けられています。

コンピューターが裏で3回ランダムに手札を引き、その中でデッキの土地比率に最も近い手札が選択される。

※2022年10月現在の仕様

土地なしの手札や土地のみの手札を滅多に見かけないのはこれが理由です。

この補正がかかった状態では、17/40の初期手札の土地枚数分布は以下のようになります。

初期手札の土地の枚数01234567
確率(%)<0.01%0.8%23.7%68.9%6.6%0.1%<0.01%<0.01%
17/40の場合(MTGA BO1補正済)

見ての通り非常に強力な補正ですが、土地2枚のパターンは依然として24%近く残っていることがわかります。一方でマリガンするたびに土地3枚のパターンが69%も来ることがわかっていれば、楽にマリガン判断をすることができそうですね。

17/40のデッキでは土地2枚の手札が土地4枚の手札より優先されるため、土地4枚の手札を優先されるようにしたければ18/40のデッキを組むというのも一つの手です。余った土地をルーターできるシステムなどが充実している重いデッキの場合はその方が勝ちやすいこともあるでしょう。最近の環境だと血トークンでルーターが容易なMID, VOW環境ではこういった構築もありだと思います。

初期手札の土地の枚数01234567
観測回数(n=1,000,000)931472005216429320242252295106382216141719
確率(%)0.9%7.2%21.6%32.0%25.2%10.6%2.2%0.2%
確率(MTGA BO1補正済)(%)<0.01%0.1%6.9%68.6%23.6%0.8%<0.01%<0.01%
18/40の場合

いかがでしょうか? 知ってる人にとっては当たり前かもしれませんが、知らなかった人にとっては結構画期的なのではないでしょうか。

逆にこれ以上土地を増やすと無駄牌がどんどん増えていくので非効率であるというのは言うまでもないかと思います。


次回は構築(60枚)デッキについて考えてみます。