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スタンダード落ちするまでに禁止カードを6枚も出した、かの悪名高いエルドレインの王権環境。実は個人的にはかなり楽しんでいたクチでした。もちろんオーコが禁止された後の話ですが。
というのも、この時代のスタンダードは私の大好きなデッキ、ジェスカイファイアーズの全盛期。4T《創案の火》から繰り出される5T《炎の騎兵》《風の騎兵》《帰還した王、ケンリス》による一撃KOは何物にも代えがたい爽快感です。
残念ながら《創案の火》はスタンダード落ちを目前にして禁止されてしまい、その後ヒストリックにはコスト増加の再調整を施されて帰ってきたものの、3ハゲこと《時を解す者、テフェリー》も再調整の結果使いづらくなってしまったことや、やはり最速設置の1ターン差が大きいこともあり、どうにも往年の輝きを取り戻せるデッキにはなりませんでした。
当時の環境にいたカードはもう一通りスタン落ちしきっており、私もあの頃の爽快感を忘れかけていたのですが、つい先日、MTG.JPのコラム、「岩SHOWの『デイリー・デッキ』」にこんな記事が。
今週のCool Deck:ケルーガ・ファイアーズ(パイオニア&エクスプローラー)
https://mtg-jp.com/reading/iwashowdeck/0036224/
恥ずかしながらそもそも私はエクスプローラーというフォーマットを遊んだことがなかったので、《創案の火》がまだ調整前の4マナで現役で使えるフォーマットがあるということを知らなかったのです。てっきりアリーナでは5マナの《創案の小火》しか使えないものかと思っていました。
これは組むしかないでしょう!!
M20ファイアーズはキーカードがほぼ全部レア以上、神話レアてんこ盛りの多色デッキなので割と札束なのですが、幸い当時のカードはほとんどそのまま持っていたので、ワイルドカードの消費も最低限で済みました。持っていなかったのは《神々の憤怒》だけ。
ジェスカイ改めイゼットファイアーズ?
リストはほんの少しだけいじりました(ワイルドカードの都合)。
このデッキはイコリア:巨獣の棲処環境のケルーガファイアーズをベースにしています(もっと昔の《ヤヴィマヤの火》をキーカードにしたファイアーズとは別のデッキです)。相棒に《巨智、ケルーガ》を添え、デッキ内の2マナ以下呪文を優秀な出来事で補ったパッケージです。
当時と違うのは、このデッキ、ジェスカイ(青赤白)ではないこと。白が抜けて2色デッキになっています。
基になっているデッキの白要素はこの辺りです。なぜ白をやめたのでしょうか?
- 《時を解す者、テフェリー》
- 《徴税人》
- 《夢さらい》
- 《帰還した王、ケンリス》
- 《轟音のクラリオン》
《時を解す者、テフェリー》
禁止カードです。そりゃ入れられるなら入れます。
《徴税人》
サイド用ですし、ケルーガを相棒に採るなら入れられません。
《夢さらい》
当時はたまに入っている構成も見かけましたが、そもそも入れない構築が主流です。
夢さらいは確かに白青を使っているならフィニッシャーとしては最高級ですが、ジェスカイファイアーズはそもそも4T《創案の火》→5T騎兵軍団からのワンショットキルがベストムーブなので、ライフを安全圏まで持っていくタイプのフィニッシャー、しかも創案の火を出した次のターンにキャストできない6マナのクリーチャーはあまり相性が良くないのです。
《帰還した王、ケンリス》
これはちょっと難しいところです。主に赤でトランプル付与して確実に叩きのめすことができ、たまに使える白でライフゲイン、青で長期戦にも強い1ドローの起動型能力は結構魅力ですが、これだけのために白をタッチするほどではないという事なのでしょう。
あと実戦で使うと分かりますが、伝説なので《鏡割りの寓話》との相性が微妙に悪く、騎兵が優先される理由になっています。
《轟音のクラリオン》
これが実戦で回していて一番欲しいと思ったカードです。絆魂を付与できるので《予見のスフィンクス》との相性が良く、盤面をお掃除した上でライフを安全圏まで持っていくことができます。アグロ殺しにはこれ一枚で十分です。
が、これだけのために白をタッチするくらいなら、ということなのでしょう。実際ファイアーズにおいて騎兵が素でキャストできなくなる白マナは結構邪魔なので、残念ですがこれでいいんだと思います。
ここは追放がついてくる《神々の憤怒》に置き換えられています。
新顔たち
当時はいなかったパワーカードの参入により、一層強化されました。
《神々の憤怒》
これは前述した通り、基本的には白マナの要らない《轟音のクラリオン》です。
環境にタフネス4が多いようなら《創案の火》設置からすぐに撃てる《嵐の怒り》に置き換えてもいいと思いますが、グルールアグロのスピードに間に合わないので基本的には《神々の憤怒》でいいと思います。青赤なので《霜と火の戦い》なんかを採りたくなりますが、5マナ域は基本フィニッシャーの居場所なのであまりマッチしていない気がします。
《鏡割りの寓話》
使ってみてすぐに気付きました。こいつは本当にやばいです。3T《鏡割りの寓話》→4T《創案の火》と動いたらリーチです。どっちかを除去できなければだいたい負けだと思った方がいいです。
何が起こるのかというと、
- 5T《鏡割りの寓話》が《キキジキの鏡像》に変身
- セット(アンタップ土地ならなんでも)、キャスト《風の騎兵》《炎の騎兵》→雑にルーターをする(土地は全部捨てる)
- 《炎の騎兵》の起動型能力を起動して+1/+0修整と速攻付与
- 速攻が付与された《キキジキの鏡像》の起動型能力で《炎の騎兵》をコピー→もう一回雑にルータをする(土地は全部捨てる)
- もう一回《炎の騎兵》の起動型能力を起動して+1/+0修整と速攻付与
- 《炎の騎兵》×2 (8/5と7/5)、《風の騎兵》(7/5飛行) が突っ込んでいってゲームセット
- よしんばそれで終わらなくてもコピーの《炎の騎兵》が自壊、PIG能力で墓地にある土地の数だけ本体ダメージでだいたいゲームセット
すごく都合の良さそうな書き方をしていますが、《鏡割りの寓話》のⅡ章のルーターが4Tに準備されているのがとてもえらく、また騎兵軍団の手札引っかき回し具合がすごいので、控えめに言って結構な確率で決まります。
今までも《猪の祟神、イルハグ》を使って似たようなことができましたが、伝説に依存する上やや厳しい条件でした。新生ファイアーズは手札が《風の騎兵》1枚だけという状況からでもこれが決まるのが恐ろしいところ。《帰還した王、ケンリス》より騎兵軍団を優先させる最大の要因です。
何ならこれは戦場更地からの話で、実際はここに《予見のスフィンクス》が浮いていたり、《砕骨の巨人》が立っていたりすることも多く、たった1ターン隙を見せたが最後、とんでもない盤面になります。《集合した中隊》を構えているセレズニアカンパニーを上から踏みつぶしていくことさえ可能です。もちろん5Tで決まらなくても、地上を固めている相手には《風の騎兵》をコピーして空から殴ればいいですし、うっかり戦場に2枚揃ってしまえば相互にコピーを繰り返して余剰マナが全部2/2になります。
前環境のファイアーズの爽快感にハマっていた人にはグッと来るものがあります。
《ゼロ除算》
これも使ってみればなるほどの一枚ですね。(というかこれもエクスプローラーなら使えるのを知りませんでした)
ファイアーズはキーカードの性質上打ち消しをほとんど採用できませんので、こういう呪文のバウンスは非常に便利です。それと半分ぐらい《時を解す者、テフェリー》の役目を受け継いでいます。何かというと、自分の《創案の火》を剥がすテクニックです。かつては《空を放浪するもの、ヨーリオン》で明滅したり、《次元の浄化》でもろとも吹き飛ばしたりできましたが、このデッキでは自発的に剥がす手段はこれだけです(《些細な盗み》は対戦相手のパーマネント限定なので注意)。割とお目にかかる機会は少なくないので覚えておくといいでしょう。
《反逆の先導者、チャンドラ》
私はカラデシュ時代を遊んでいないのでこのカードの強さについては理解が深くありませんが、まあ今さら言わなくても強さはお分かりかと思います。
大振りなミッドレンジ~コンボデッキなのでコントロールに弱いのは宿命ですが、こいつが着地すればそれだけで相手を焼き切る可能性を秘めています。どうしても5枚目の土地が見つからない時に強引にマナ加速から素出しのお膳立てをすることもあります。ただ基本的にはサブプランの域を出ず、ダブってもしょうがないので2枚だけ。
特殊土地
《創案の火》で浮いたマナを使える先が増えたので、きっちりライフを詰めるのが簡単になった印象を受けます。呪文ではないため対戦相手のターンに動くことができ、意表を突くプレイングができるのも利点です。使用頻度は高くありませんがあると使える場面もありますし、基本土地も十分入っているので一枚挿ししています。
基本的な動かし方
プロではないのでがっつりした戦略記事は書けませんが、愛用機なのでだいたいこういう動きが強い、みたいなことだけ。
まず、ファイアーズは性質としては一撃必殺のコンボデッキではありますが、立ち回りはミッドレンジ的なので基本的にBO3向けのデッキです。実際BO1で勝ったり負けたりを繰り返してこれはいかんということでBO3に乗り込んだらランク戦10連勝したのでそういうもんだと思います。ケルーガを採って1マナ域アクションを放棄しているので、アグロとのメインゲームには当然のように弱いのです。
基本的にはこんな感じの動きがベストです。
- 1T: 《天啓の神殿》占術1
- 2T: 出来事呪文(《踏みつけ》《些細な盗み》)
- 3T: 《鏡割りの寓話》《ゼロ除算》《神々の憤怒》
- 4T: 《創案の火》からの《嵐の怒り》か《反逆の先導者、チャンドラ》
- 5T: 《炎の騎兵》《風の騎兵》
なんかただマナカーブを書いただけな気もしますが、相手が普通のクリーチャーデッキなら、目標は何が何でもこのムーブです。
出来事呪文の使い方
《砕骨の巨人》は2→3と1枚でこなすので繋げて使いたくなりますが、あまり急いで唱える必要はないです。《砕骨の巨人》はパワーが4あるので、《炎の騎兵》を使ったフィニッシュ時にクリーチャーの頭数が足りない時は駆けつけてもらう必要があります。追放領域にいることで手札破壊にも強いので、手札から唱えられる別の選択肢があるならそちらを優先すべきことが多いです。
《厚かましい借り手》も役割は《砕骨の巨人》と近いのですが、コントロールを相手取っていて、対応してくれるなら《創案の火》が着地できそう、という場合は、相手エンド前に素出しします。普通に飛行3点クロックなので殴り切るとまでは言わずとも結構詰めてくれます。
どっちの騎兵を先に出す?
ぜいたくな悩みですが、《創案の火》が着地していて、手札に《炎の騎兵》と《風の騎兵》が両方ある場合、どちらを先に唱えるかという問題です。どうしても欲しいカードを探しに行くなら《炎の騎兵》を先に出して、手札を全て入れ替えます。《風の騎兵》を先に出すのは手札が騎兵2枚しかない場合と、手札にもう必要なパーツが揃っており、土地をできるだけ多く落としたい時です。手札が潤沢なのに《風の騎兵》を先に出すのはだいたい事実上の勝利宣言になります。
《創案の火》を設置しない時
こちらの盤面にクロックがあり(《鏡割りの寓話》のトークンや《厚かましい借り手》など)相手がマナスクリューで詰まっている時、珍しいケースですが、4マナ立てて手札に《創案の火》があっても設置しないこともあります。《ゼロ除算》や《些細な盗み》を使って捌き切ればライフを詰められる展開の場合は、クロックパーミッションのような立ち回りをすることになります。
この場合、《鏡割りの寓話》のⅡ章で探しに行くのは全ての2マナ、3マナのインスタントです。《創案の火》を捨てることも検討します。《踏みつけ》は青のインスタントに比べると優先度は落ちますが、最後の詰めに有効です。
デッキ別対策
ラクドスミッドレンジ
こちらの火力除去の範囲外のタフネスを持ち、バウンスしてもハンデスで一方的にアド損する《死の飢えのタイタン、クロクサ》に間に合われると厳しいです。
クリーチャー除去が多い色なので、4T《創案の火》を設置した直後に《予見のスフィンクス》を出すのはほぼ無意味で、《鏡割りの寓話》の方が圧倒的に良いです。次ターンルーターでコンボのお膳立てができる上、返しで《絶望招来》を撃たれた時に《創案の火》を生き残らせることができます。
黒を含むデッキ相手のマリガン基準ですが、ハンデスで1枚落されると苦しくなる手札よりは《予見のスフィンクス》で最初の数ドローの内容を操作できる方が強いです(特に後手の場合)。
ラクドスサクリファイス
自分がファイアーズでなくてもそうですが、バウンスでとにかく《波乱の悪魔》を着地させないようにしましょう。単体のカードパワーがそれほどでもないので、とにかくこいつの着地を許さなければどうとでもなります。フルタップになったら全体除去で流します。この時《神々の憤怒》の追放効果が偉いです。
《砕骨の巨人//踏みつけ》は波乱の悪魔を踏めないのでサイドアウト候補です。
焦って不必要にトークンを立たせると《初子さらい》が飛んできて痛い目を見ます。特に《マスコット展示会》は撃つならその場でフィニッシュできるのが望ましいです。ターンを渡すなら《初子さらい》を何枚撃たれても問題ないことをよく確認しましょう。
青単スピリット
ミッドレンジコンボが苦手とするアーキタイプです。2マナ、3マナのアクションで相手の猛攻を捌き切れるかにかかっています。《隆盛するスピリット》の3番目の能力が間に合ってしまうと火力除去の範囲外に行ってしまうので基本的には負けです。
出来事呪文を弾かれるとアド損した気分になりますが、1対1交換は取れているので打ち消しや立ち消えを恐れず使っていきましょう。どのみち相手のクリーチャーは全て飛行なので《砕骨の巨人》は役に立ちません(《厚かましい借り手》は飛行ブロック可能なので、ここで若干差があります)。本命はクロックが並んだところに《神々の憤怒》です。
相手が打ち消しを使い尽くしたところで《創案の火》が着地すれば、1ターンに2回のうち少なくともどちらかのアクションは通るので叩きつけてフィニッシュできます。このマッチアップでは珍しく《風の騎兵》の価値が《炎の騎兵》より高いです。
緑単信心
まだエクスプローラーには《ニクスの祭壇、ニクソス》がないので信心デッキなのかは謎ですが、とりあえずここではそう呼ぶことにします。
最序盤のマナクリーチャーを踏みつぶせればそれほど困らない相手です。相手のメインアタッカーは軒並み火力除去の射程外ですが、アクションが互いに大振りなので、そうなると手数と対応力で勝るファイアーズに利があります。
セレズニア天使
《希望の源、ジアーダ》を踏みつぶせるので《砕骨の巨人》は役に立ちますが、一方で《正義の戦乙女》《翼の司教》がタフネス4なので《神々の憤怒》はほぼ効きません。《嵐の怒り》が役に立つマッチアップです。
火力除去やバウンスを駆使してとにかく並べさせないことを徹底していれば、ファイアーズの爆発力の前ではライフが20点でも50点でも同じことです(さすがに100点超えてくると1ターンで削り落とすのは厳しいですが)。
ボロスヒロイック
序盤はもちろんフルタップの隙をついてガンガン踏み潰していきます。
あとは《創案の火》が着地して騎兵軍団を展開できても、リーサルにならない攻撃は絶対にしない。これだけです。
どんなに盤面が貧弱でも20点を一気に削り落とせるのは向こうもこちらも同じなので、常にブロックはできるように。相手にはプロテクション付与もトランプル付与もあるので、1体立たせてればいいだろうという甘えは禁物です。
一撃必殺!おすすめのデッキです
本当にこのデッキの存在を知ってからエクスプローラー環境を遊び始めたのでまだまだ環境理解が進んでいないのですが、今のところ同型対戦が一度もなく、ローグデッキ扱いされそうな雰囲気を感じます。ですがそれはファイアーズの持ち味である高確率の5T一撃必殺がわからん殺しとして機能してしまうということでもあります。メタに食い込んで警戒されない限りはかなり戦えるデッキだという印象を受けました。
あとどうでもいいですが私の一番好きなカードは《風の騎兵》です。お待ちしております。