【MTGデッキ紹介】寓話を失ってもまだやれる? グリクシス・シンギュラリティ【2023年9月スタンダード】

エルドレイン再訪! 個人的にとても好きな次元なので、中身はどうあれ期待していたセットです。

特にエルドレインは童話の物語がバックにありますので、かわいいカードがいっぱいです!

しかしこれはマジック。背景物語もいいですが、まずは勝負に勝たなくては……。

仮想敵

さて、現スタンダードの環境で、まず見ないことはあり得ないレベルで採用率の高いカードたちを列挙します。こいつらは強いから使われているわけであって、これらを乗り越えられないようではただの紙束です。紙束乱造機としてこのあたりは痛いほど心得ています。

クリーチャー

《黙示録、シェオルドレッド》

悪名高き4/4/5。記事執筆時点で晴れる屋での価格が14,000円(日本語版NM)というスタンダードリーガルなカードにあるまじき価格のカードです。ドローごとにライフを吸われるので、対処したかったら5点以上の火力か確定除去。欲を言えば解答を探す手段もドロー以外で持ちたいです。

《フェアリーの黒幕》

世界大会覇者。私もよくお世話になっています。相手のドローに便乗してくるのが厄介。タフネス自体は低いですが、今回はフェアリーであることがメリットになってしまったため、対処強要度は増しています。

《しつこい負け犬》

2/3/2。本当にしつこい。

これのために追放できる除去を採らないとリソース負けしてしまいます。

《眠り呪いのフェアリー》(NEW!)

スポイラーの段階で目をつけていたカードです。麻痺カウンターモリモリですぐに動くことができませんが、クロックパーミッションのようなデッキが組めるなら先攻1ターン目のアクションとしては非常に強いでしょう。

  • 《切り崩し》の範囲外の3/3というスタッツ
  • 《喉首狙い》等の黒の主要な除去に4マナを要求できる
  • それでいて放置できないサイズ

メタゲームにマッチしていそうです。

《慈愛の王、タリオン》(NEW!)

ソーサリータイミングの4/3/4飛行なので対処自体は簡単ですが、2点ロスと1ドローを相手に献上するので、指定が刺されば0:1交換から。地味に効きます。

非クリーチャー呪文

《喉首狙い》、《切り崩し》

とにかく現在のスタンダードは黒のインスタント除去が強すぎます。これらをかわすか最低限牽制するためには、3/3以上のアーティファクトクリーチャーであるか、呪禁や護法、破壊不能などの除去耐性を持っていなくてはなりません。

アンコモンなのでカード資産が足りないと嘆いている層ですら4枚積めるというのもポイントです(?)

《太陽降下》

対象に取れないし破壊もされないからと安心していると全体追放が飛んできます(白限定ですが)。

これが何を意味するかというと、ただ相手よりでかい生物を並べ続けてこの手の追放に無抵抗なミッドレンジは存在を許されないということ。それに《下支え》《救済の波濤》だけ構えていればいいというものでもないということです。

対策カード

《石術の連射》

フェアリーの対策カードとしてこれ以上ない性能だと思います。現状のスタンダードには《眠り呪いのフェアリー》を1マナでキレイに返す手段は(たぶん)これしかありません。それ以外にも青系の多くのクリーチャーにクリーンヒットしますし、ついでのように青単テンポもシバくことができます。

まあ色対策カードなんだから当たり前か。これがメインから積まれるようになってきたら何かが禁止される兆候です。

ちなみに護法というと弱い呪禁のように感じますが実際はそんな単純なものではなく、護法クリーチャーを対象にソーサリー除去を打ち、追加マナを支払ったところを打ち消されると凄まじいテンポロスが発生する仕組みになっているので、呪禁より強くなるシチュエーションも多いです。呪禁相手にはそもそも唱えられないので土地は立ったままになりますよね。この点《石術の連射》は打ち消されない呪文である点が非常に偉いです。

《否認》、《呪文貫き》

《黙示録、シェオルドレッド》の存在下では純粋なクリーチャーだけのビートダウンが環境に存在できないため、《否認》をメインから積んでもまず腐ることはないと思います。最近は《アラーラへの侵攻》とかいう人をバカにしているデッキが流行り出しているらしいので、それに対する対抗策という意味でも必須級です。早いデッキにするなら《呪文貫き》のような1マナのものも。

《本質の散乱》?

2マナの最強生物が多すぎるせいで逆にノンクリーチャーというのもまたほとんどあり得ないので、クリーチャーのハードカウンターも欲しくなりますが、これはちょっと微妙かなと思います。

何がというと、後手で弱い。

先攻2ターン目に出てきたクリーチャーは極力その場で潰しておきたいのです。黒や赤なら1マナでの対応が可能なのですが、2マナ立ててから後手で対応するこのカードはやや分が悪いと言わざるを得ません。このカードが輝くのは3マナの最強生物が流行っている環境だと思います。とはいえ先攻なら2ターン目に構えたいデッキもあると思うので、サイドに積んでおくのがいいのかな?

《塔の点火》

追放効果があるので《しつこい負け犬》にぶつけるための火力ですが、別に相手が黒でなくても1マナ2点火力はいろんなところに当たり汎用性が高いのでメインから積んでOKですね。

《記憶の氾濫》

直接的な対策ではないですが、《黙示録、シェオルドレッド》《フェアリーの黒幕》がいるのでできるだけドローしたくないというニーズに見事に応えています。そもそものスペックも強いけど環境が環境なので相対的に強い、という感じ。


この時点で青赤を含むコントロールデッキになりそうです。

デッキリスト

話は変わりますが、最近デュエマからMTGに興味を持った友人をMTGアリーナに勧誘したらまあまあハマってくれてよく指名対戦をするようになりました。

最近のスターターデッキってすごいんですね。青黒のスターターデッキに普通に《碑出告と開璃》と《多元宇宙の突破》が入ってるんです。知ってました? そんなテキストの長いカードを初心者向けのデッキに入れるなよと。

何度か相手してみて思ったのですが、やっぱり《碑出告と開璃》は強い。5/5/4飛行、ETBでブレストが誘発する5マナパワー5のフライヤーはM20の《風の騎兵》を思い出しますね。

ということでこのスターターデッキにインスピレーションを受けて、青赤を最低限使いつつフィニッシャー枠に《碑出告と開璃》を据えたデッキを組もうと思ったわけです。そうなったらもうグリクシス(青黒赤)・シンギュラリティしかないでしょう。ミッドレンジコンボはいつの時代も強いですからね。

禁止改定前のグリクシス・シンギュラリティは《税血の収穫者》など序盤から押していける攻めっ気の強いデッキでしたが、今回のこれは割とコントロール寄りです。クリーチャーは最低限《黙示録、シェオルドレッド》と《碑出告と開璃》しか入れていません。さらにデッキの名を冠する《爆発的特異性》もこれには1枚しか入れていません。クリーチャーが並ばないので、生撃ちが困難なのです。初手に来たらお荷物のカードを2枚も3枚も積むわけにはいかないので。

代わりに火力除去とリソース補充系のスペルが大量に入っています。特に使い勝手がいいのが《衝動》と《眼識の収集》。必要なカードが自分のデッキにあるなら《衝動》、相手のデッキにあるなら《眼識の収集》を……何言ってんだこいつ、って感じですが実際そうやって使い分けることは結構あります。

寓話の代わりに入れたのがこれ。エルドレインの森より、新顔《蒐集家の保管庫》です。

冷静に読むと書いてあることめちゃくちゃ強いです。いつでもできるルーター+実質マナ加速ですからね。ロングゲームになった時にとりあえず手札を整えつつ宝物を出せるのは素晴らしい。

ちなみに《碑出告と開璃》は追放除去に弱いので、白系のデッキ(《太陽降下》で追放)やドメインデッキ(《力線の束縛》でインスタントタイミングで追放)とかは結構厳しそうです。最近だと《一巻の終わり》で黒でも対処手段があります。

そういう相手にはサイド後は《強迫》からの《ズルゴとオジュタイ》で颯爽と4点パンチしましょう。永久に対処されないフライヤーが空から殴り続けられるのは気持ちいい!

これだけのために白をタッチしていますが、白マナが出れば《ハールーンの戦賛歌》をキッカーで唱えられたりもします。

このよくわからない4点火力、《碑出告と開璃》を自分から除去する、《慈愛の王、タリオン》の指定に引っかからずにインスタントタイミングで始末する、アグロに対する延命、など意外と役割が多くなんだかんだで活躍します。もちろんメタゲーム次第なカードなので2枚だけですし後の調整で抜けることもあるでしょうが、現状は持っていて損したことがないくらいの良スペルです。唯一シェオルドレッドだけは1枚で焼けないので注意。

相性とか

まだメタゲームは混沌としているので正直何とも言えないところはありますが、一応当たることができた相手についてはメモ程度に書いておきます。

なお、大前提としてこのデッキはBO3向けです。BO1はどうしようもない相手もそれなりにいますがサイド後に相性を大きく改善できるマッチが多いので。

青黒フェアリー、レジェンズ

こちらの動き出しがやや遅いので、メインは先攻を取られていると厳しい戦いになるケースが多いです。《碑出告と開璃》が間に合えば相当有利になりますが、そうでなければ厳しい、といった感じ。

相手が上手く回っていても捌き切ってこちらに手番が回ってきさえすれば勝てますが、そこまでに15点以上削られていることが多いです。なのでライフを詰められていても焦らず正確に生き残る道を探すしかありません。

サイド後は専用の対策カードを入れられるのでかなり改善します。

黒緑ミッドレンジ

新戦力を獲得したことでできた新しいアーキタイプです。《眠らずの小屋》がやたらとでかいのがずるい色。

《苔森の戦慄騎士》《しつこい負け犬》のどちらにも《塔の点火》がクリーンヒットするせいでやたらと有利です。

《碑出告と開璃》に対しては相手は《喉首狙い》かキッカーされた《羅利骨灰》でしか対処できないので、メインは強気に使っていけます。サイド後はおそらく《一巻の終わり》を入れてくるので、20点コンボのセットを全部抜いて《ズルゴとオジュタイ》にすると相手は全く対処できません。

赤単アグロ

多くの場合は除去を的確に当てていけば捌き切れるはずです。基本土地がほとんど入っていないので、《焼炉の懲罰者》だけは確実に焼くように。このマッチに関してはそれほど言うこともないでしょう。

緑白エンチャント

相手のクリーチャーが育ち切らないうちに焼き切ることができればそれほど怖くありません。ただしこちらは色の都合上エンチャントに触れないので、疑似除去になすすべがありません。

白単ドメイン、5Cアラーラ

なんでコントロールがランプ系の大振りなデッキに負けるんだと思ってしまいますが、メインは絶望的です。こちらのプランがとにかく《力線の束縛》に弱い&長引けば長引くほど相手の方が単体のカードパワーが高い関係で不利になるので、こちらとしては早急に勝負を決めたいですがその手段がありません。

タッチ白にしているおかげで5Cアラーラに対してはサイド後に《機械の母、エリシュ・ノーン》を入れることができ、もろもろの危険なETBを止めることができますが、まだそこまで漕ぎつけたことがないのでどうなることやら……。この手のデッキが流行ってきたらこのデッキを使うのはやめた方がいいでしょう。

おわりに

新セットによる環境のアップデートで、メタゲームはまだ混沌としています。こういうコントロールデッキは敵を見定めるのに時間がかかるかもしれませんし、それによって取る対策カードも変わってくるので、これだ!という形を見定めるのに苦労する気がします。

しかし色が強くなんとか形にしたいコンボではあるので、上手くまとまったらまたアップデートしようと思います。それでは、良いマジックライフを。