私の痛みに効くのはどれ?解熱鎮痛剤の選び方

日々お世話になっている解熱鎮痛剤について、私個人の備忘も兼ねたまとめです。よく「どれがどれだっけ?」ってなるので……。

本記事は2022年1月初稿記事を更新したものです。

はじめに(著者プロフィールと注意)

著者は薬科学修士です。薬剤師資格は持っていません。

最新の情報に更新できていない恐れがあるため、医療従事者の指示があった場合は本ページの記載より優先して従ってください。使用に際しては、薬剤師の指導の下、用法・用量を守ってご使用ください。

なお、本ページの最終更新日は2022.7.8です。

解熱鎮痛剤として流通している代表的なOTC医薬品

有効成分別に列挙しています(順不同)。

同じブランドの薬でも用途に合わせて有効成分を変えているため、似た名前の薬を服用することで予期しない他の薬剤との相互作用を引き起こす恐れがあります。特に服用中の薬がある方、下記の「禁忌」「場合により禁忌」に当てはまる場合は、独断でこれらのOTC医薬品を使用するのはやめ、必ずかかりつけの医師または薬剤師に確認してください。

アスピリン(アセチルサリチル酸)系

  • 消化性潰瘍、アスピリン喘息、妊婦に対しては禁忌
  • サリチル酸系製剤過敏症患者、出血傾向のある患者(血友病、ビタミンK欠乏症)に対しては禁忌
  • 腎障害、肝障害、血液障害、心機能不全、高血圧症に対しては場合により禁忌
  • 主な副作用:消化性潰瘍、喘息発作、消化管出血、ライ症候群
  • 他のNSAIDsと異なりCOXを不可逆的に阻害

簡単に言うと:腹痛を含む場合や妊娠中ならこれではなくアセトアミノフェンを使うこと

バファリンA

  • ライオン株式会社
  • その他有効成分:合成ヒドロタルサイト(ダイバッファーHT)

バイエルアスピリン

  • 佐藤製薬

イブプロフェン系

  • 消化性潰瘍、アスピリン喘息、妊婦に対しては禁忌
  • 腎障害、肝障害、血液障害、心機能不全、高血圧症に対しては場合により禁忌
  • ジドブジン(抗ウイルス・HIV逆転写酵素阻害剤)との併用禁忌
  • 主な副作用:消化性潰瘍、喘息発作、無菌性髄膜炎
  • アスピリンとの併用で抗血小板作用が低下する場合あり

簡単に言うと:腹痛を含む場合や妊娠中ならこれではなくアセトアミノフェンを使うこと

イブA

  • エスエス製薬
  • その他有効成分:アリルイソプロピルアセチル尿素 無水カフェイン

イブクイック頭痛薬DX

  • エスエス製薬
  • その他有効成分:酸化マグネシウム アリルイソプロピルアセチル尿素 無水カフェイン

バファリンルナi

  • ライオン株式会社
  • その他有効成分:アセトアミノフェン 無水カフェイン 乾燥水酸化アルミニウムゲル

バファリンプレミアム

  • ライオン株式会社
  • その他有効成分:アセトアミノフェン 無水カフェイン アリルイソプロピルアセチル尿素 乾燥水酸化アルミニウムゲル

ナロンエースT

  • 大正製薬
  • その他有効成分:エテンザミド ブロモバレリル尿素 無水カフェイン

ロキソプロフェン系

  • 消化性潰瘍、アスピリン喘息、妊婦に対しては禁忌
  • 腎障害、肝障害、血液障害、心機能不全、高血圧症に対しては場合により禁忌
  • 主な副作用:消化性潰瘍、喘息発作、鬱血性心不全、無菌性髄膜炎、横紋筋融解症
  • ロキソプロフェンNaを含む製剤は第1類医薬品
  • プロドラッグのため胃腸障害は少なめ

簡単に言うと:腹痛を含む場合や妊娠中ならこれではなくアセトアミノフェンを使うこと

ロキソニンS

  • 第一三共ヘルスケア
  • 第1類医薬品

ロキソニンSプラス

  • 第一三共ヘルスケア
  • 第1類医薬品
  • その他有効成分:酸化マグネシウム

アセトアミノフェン系

  • 消化性潰瘍、アスピリン喘息に対しては禁忌
  • 腎障害、肝障害、血液障害、心機能不全、高血圧症に対しては場合により禁忌
  • 副作用:肝障害、アナフィラキシー、喘息発作、顆粒球減少症
  • 妊婦使用可能
  • アスピリンと同等の解熱鎮痛作用はあるが、COX阻害作用は弱く、抗炎症作用はほとんどない
  • 医療用医薬品ではカロナールがこれにあたる

タイレノールA

  • ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社
  • 海外(特にアメリカ)で同名のOTC医薬品がスーパーなどで容易に入手可能

上にも記載した通り、アメリカではほとんどどこでも手に入る非常にメジャーなOTC医薬品です。海外旅行中、急に解熱鎮痛剤が必要になった際に備えてこのパッケージは覚えておくことをおすすめします。

セデスV

  • シオノギヘルスケア
  • その他有効成分:エテンザミド アリルイソプロピルアセチル尿素 無水カフェイン セトチアミン酸塩水和物(ビタミンB1誘導体)

ナロン錠/ナロン顆粒

  • 大正製薬
  • その他有効成分:エテンザミド

新セデス錠

  • シオノギヘルスケア
  • その他有効成分:エテンザミド アリルイソプロピルアセチル尿素 無水カフェイン
  • エテンザミド主剤

ノーシン錠/ノーシン散剤

  • 株式会社アラクス
  • その他有効成分:エテンザミド カフェイン水和物

以下は専門的なトピックになります。

一般医薬品のリスク区分

厚生労働省のガイドラインによる、一般用医薬品のリスク区分は3段階に分類されています。

なお、医療用医薬品はこれとはまた違った区分になります。

第1類医薬品

その副作用等により日常生活に支障を来す程度の健康被害が生ずるおそれがある医薬品のうちその使用に関し特に注意が必要なものとして厚生労働大臣が指定するもの及びその製造販売の承認の申請に際して第十四条第十一項に該当するとされた医薬品であつて当該申請に係る承認を受けてから厚生労働省令で定める期間を経過しないもの

医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 第三十六条の七

指定されているものか、まだ出たばかりなので経過観察が必要だよーってもの、ということですね。

なお第1類医薬品を販売することができるのは薬剤師のみに限られており、登録販売者ではこれらをお客さんに出すことはできません。

第2類医薬品

その副作用等により日常生活に支障を来す程度の健康被害が生ずるおそれがある医薬品(第一類医薬品を除く。)であつて厚生労働大臣が指定するもの

医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 第三十六条の七

解熱鎮痛剤やその他ドラッグストアで簡単に入手可能な医薬品はだいたいここです。患者の体調体質如何やオーバードーズにより重篤な副作用が出る可能性がある、というイメージで良いと思います。第2類医薬品以下は登録販売者の販売が認められています。

なお、この中でも特に注意を要するものは指定第2類医薬品としてさらに細分化されています。

第3類医薬品

第一類医薬品及び第二類医薬品以外の一般用医薬品

医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 第三十六条の七

第2類との違いは、重篤な副作用が知られているかいないか、になります(※副作用があるかないか、ではありませんのでいずれにせよ過量摂取はNGです)。

一般用医薬品(OTC医薬品)のネット販売について

2014年6月より、薬事法及び薬剤師法の一部を改正する法律が施行されたことで、一般用医薬品が適切なルールの下、全てネット販売可能になりました。

ただし、第1類医薬品については、販売は今まで通り薬剤師に限定され、その際に

  • 年齢、他の医薬品の使用状況等について、薬剤師が確認する
  • 適正に使用されると認められる場合を除き、薬剤師が情報提供を行う

ことが必要となります。

【補足】一般用医薬品≠OTC医薬品

正確に書くと、OTC医薬品 ⊃ 一般用医薬品 です。

OTC(Over The Counter)医薬品は、要指導医薬品と一般用医薬品を含みます。このうち、要指導医薬品は現在も薬剤師による対面販売が義務付けられています。

【2022.1.24追記】解熱鎮痛作用と抗炎症作用の違い

前項でアセトアミノフェンには抗炎症作用がほとんどない、と記述しました。

炎症とは、大まかに言うと「生体に侵入した外敵や外傷などの組織障害因子に対する、因子の排除と組織修復の一連の防御反応」のことです。炎症は発熱や痛みを伴うため、この作用を弱めることで発熱や痛みの軽減になります。これが抗炎症作用です。

一方単に解熱鎮痛作用というともっと広義に全ての痛みや発熱に対しての作用を指します。アセトアミノフェンは長く使用されてきた歴史を持つ一方で、その作用機序についてはまだ完全には解明されていません。

参考文献リスト

医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=335AC0000000145 2022.1.19 閲覧

薬が見える vol.1 MEDIC MEDIA 第1版

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